第11章 Nameless fighter
「使っていいのかな?」
「この本丸は主のものだからね、いいと思うよ」
新たな部屋ができたようで、なんだか嬉しい。
そしてベッド、これもありがたい。
実は畳に布団を敷いて寝ることに未だに慣れずにいたのだ。
「ここなら、心置きなくそういうこともできるよね」
にっかりがそう言って私をベッドに押し倒した。
「ぁ…」
「一番は僕が使わせてもらうけど、他の男士たちともここなら主も気兼ねないだろう?」
確かに、どこでするにしても少し気にはなっていたけども。
「それにね、昨日声が少し外に漏れていたよ?」
言われて一瞬血の気が引く。
「ウソ…」
「…ウソだよ」
にっかりはにやっと口角を上げた。
「もー、なんで!?」
「なんでって、あんな気を出すにはすることしないと無理だろう?僕には判ってしまうんだから隠しても無駄だよ」
だからにっかりが三日月に選ばれたのだろうけど。
「昨日は朝からずいぶんと気の乱れがあったね。平気かい?」
「うん、もう」
「だよね。主の気が安定したから漸く僕に声がかかったんだろうしね」
そう言って私の着物に手を掛けた。
「僕は今から君を抱くけどいいかい?」
「…嫌っていったらやめてくれるの?」
「まさか。嫌だと言えないくらい感じさせてあげるよ」
帯をほどき、胸元を広げる。
「おや、こんなに印をつけられて。当て付けかな?」
指先で昨日清光につけられた痕をなぞった。
「ねぇ、僕はどうしたらいいかな?」
「…にっかりさんは三日月さんに何て言われたの?」
「愛情をもって抱いてやれって。僕に愛情だなんて、あのひとは何を考えているんだろうね」
言いながら着ていたジャージを脱ぎ肌を晒す。
すごく華奢な身体。引き締まっていて、筋肉もうっすら見える。
「僕の身体にそんなに興味があるのかい?」
見つめてしまっていたらしい。そう言われて反射的に目を反らした。
「いいよ、君にならどれだけ見つめられても」
そう言って私に跨がったまま口づけてきた。
くちゅくちゅと舌を絡めて、私の脳にぼんやりとしたフィルターがかかり始めたころ漸く離れていく唇。
「不思議だよね、キスだけで君は狂うほどに感じるスイッチが入ってしまうんだから」
そう言って私の肌に指先が触れただけで、びくんと跳ねる身体。
それを見てくすりと笑うにっかり。
