第11章 Nameless fighter
「あ、にっさりさん、あるじさまと手を繋いでどこにいくんですか?」
ちょうど出会った五虎退に聞かれ、
「お化けの部屋だよ?主はとってもお化け屋敷が好きでね、だったら本物を見に行ってみるかいって誘ったのさ。君も一緒にくるかい?」
妖しげにそう言うと、五虎退は急に涙目になって、
「ぼっ、ぼくは行きません!あるじさま、気をつけてください、ね」
震え始める。
そこに通りかかった一期が、
「五虎退に何を?」
私たちが苛めているように見えたのか聞いてきた。
「い、いち兄!にっかりさんとあるじさまはお化けの部屋にいくそうです。ぼ、ぼくは怖いからお断り、しました」
本当に泣きそうになっている。
そして、今の時間帯と手を引かれている、という状況から察してくれたのか、
「五虎退は私と向こうに行こうか。もうすぐお昼だし、食べたら私と遊ぶかい?お化けの部屋はにっかり殿がいないときに近づくと呪われてしまうからね。だから決して近づかないように」
「はっ、はい」
そう言って私に会釈をし、五虎退を連れていってくれた。
「ふふっ、短刀は扱いやすくていいね。ただの物置をお化けの部屋だと教えたら信じてくれたよ」
にっかりは笑いながらまた私の手を引く。
「こっちだよ」
廊下の端にあった隠し扉を開け、更に進んだ。
本当に知らない場所があるようだ。
「ここだよ」
そう言ってにっかりが開けてくれたドアの向こうには、和洋式の部屋が。
まるで旅館のようなその部屋には和風のベッドにドレッサー、そしてトイレと洗面台、露天風呂までついている。
「すごい」
「石切丸さんに聞いたんだけど、唯一の女性である主のための部屋だそうだよ」
鍵も掛かるしね、と教えてくれた。
「いつ見つけたの?」
「昨日だよ。なんだか主が幸せな気を放っていただろう?そのときにね、隠し扉が判ったんだ。見えたというのが正しいのかな。それで君に見せようと審神者部屋に行ったら君は寝ていてね、だから石切丸さんとふたりで確認したんだよ」
にっかりは見えないものが見えるようだ。
そして、昨日目覚めたあと石切丸が言っていた贈り物の意味が判った気がした。
「すごい!でもなんで上の人教えてくれなかったんだろ」
「本来審神者は住み込みの仕事だからね。君はパートだから必要ないと思われてたんじゃないかな」
