第11章 Nameless fighter
ここ最近、あまりにもみんなが毎日出陣してくれて休みもとれていなかったので、今日は全体的に非番にしようと決めた。
昨日忙しすぎて出陣計画が立てられていなかったし。
夏休み前まで土日祝休みだったんだ。それが復活するだけ。
そして出陣がないのならば怪我をすることもないし、とりあえず三日月に断りを入れて一度家に帰ってみることにした。
こちらを朝出て、気になっている向こうでの時間の経過なんかを確認して仮に5分で戻れたとしてもすでに昼前になっているかもしれない。
とにかく急ごう。
清光に見つかるとうるさそうだから、と急いで玄関を出た。
久しぶりに戻った気のする我が家。
それでもこちらの時間は穏やかに緩やかに過ぎていたらしく、スマホを確認するとこちらを出た日時の二時間半程度しかたっていなかった。
ほんとなんだ。あんなにすごく濃い時間を過ごしているのに、たったの二時間半。
このままだと、ほんとにまる1ヶ月向こうで過ごして帰ってきたらまだ1日も経っていませんでした、で私は元の生活に戻れるのだろうか?
ほんの少し不安になってしまったり。
いやでもとりあえず早く本丸に戻らなきゃ。
とりあえず化粧品とか和装が多いから合いそうな簪とか必要そうなものを鞄に詰めてまた本丸へと戻った。
「主、おかえり」
玄関で私を迎えてくれたのは、今日もずいぶんと高い位置で長い髪をまとめていたにっかりだった。
「た、だいま」
「待っていたよ。今日は僕の日なんだってさ。どこでするかい?僕の部屋?君の部屋?」
私の手をとって妖しく見つめてくる。
ついに、にっかりの回が来たのか。
思ったより遅かったな。一体どういう順番の組み方してるんだろう…。
「そういえばね、僕みつけたんだよ、この屋敷の奥にね。部屋のことだよ。誰も知らないような場所にあったんだ。どうだい?そこに行ってみないかい?」
指先だけで手を繋いで私を連れていこうとする。
「あ、荷物…」
持っていた荷物に気づくと、
「何を持ってきたんだい?」
「化粧品とか、諸々…」
「化粧なんてしなくていいよ?最近ずっとしていなかったし今もしていないだろう?僕は素肌の君の方が好きだけどな」
それを奪い取り、にっかりが持って進む。
審神者部屋まで持って行かせてはくれないらしい。
だからおとなしくついていくことにした。