第10章 Beautiful life!!
「今日俺同じ部隊だったんだけど、なぁんかずっと不機嫌だったんだよね」
闘い方が荒かった、と清光。
「大倶利伽羅殿の機嫌を損ねた原因は多分私です」
一期が言った。
「なんで?」
「昨日、大倶利伽羅殿が近侍だったのですが、主が用を済ませるのをかなり待たれていたようで。その時に私と手を繋いで戻ってきたのが気に入らなかったのだと思うのです」
物吉は朝、私が言ったことしか判らないなりに黙って聞いてくれている。
「遊んでたと思われてたみたいで」
私が言うと、
「ま、言えないよね」
清光がしょうがないかと溜め息をついた。
「私が黙って散歩に行ってたのは事実だしね…」
「まぁ口にはしませんが、大倶利伽羅殿も主を慕っているのでしょう。私にヤキモチを妬かれたと思うのが自然かと」
一期らしい分析をしてくる。
「そうねー。だからって光忠以下長時間遠征出すのはどうかと思うけどね。物吉いてよかったね」
「ほんとよ。計画立てながら焦ってたら、物吉くんはおいといてやるって言われてほっとしたもん」
その言葉に物吉の表情が緩んだ。
「主様のお役に立てて良かったです」
「物吉くんありがとー」
「いえ」
お礼を言うと照れたように顔を赤く染めた。
「なになにー?物吉も主が好きなのー?」
清光が茶化すように聞くと、
「…そりゃ好きですよ。好きじゃない男士なんているんですか?」
「いないでしょうな。私も好きですから。今日の分ですぞ」
一期が言った。
「今日の分?」
「はい。主は私の思いを信じてくださらないので毎日お伝えしてみようと」
「それ、素敵ですね」
物吉が笑顔になった。
だけど私を好きじゃない男士はいない、その言葉は多分間違えてる。
三日月がいい証拠だ。
「…欲張りだなぁ、私」
ぼそっと呟くと、
「俺はもっと欲張って欲しいけど」
清光が言った。
まぁ、いいか。三日月に好かれてなくても、仕事上の関係だとしても。
私は清光が好き。
みんなが好き。
それで充分だ。
「ねぇ清光、今日は清光の浴衣着たい」
私が言うと、
「え…あ、うん」
反射的に頷いてくれた。
「ほんとは毎日清光の浴衣が着たい」
物吉は意味が判らないと言った顔。そして一期は、判っていても何も言わないでいてくれた。
もう胸が痛い。苦しい。