第10章 Beautiful life!!
「主様、カレー大好評です!」
「私たちも頂きましたが、とても美味しかった」
厨に行くと物吉と一期が笑ってくれて、ささくれだっていた心が少し滑らかになった。
「弟たちは本当に気に入ったようでおかわりをせがむほどでした」
安心した。提案してくれた光忠にも感謝だ。
「主様も食べますよね?」
「うん。ありがと。でも少な目でいいよ」
さっきのことで胸がざわついて食欲が沸かない。
「何かありましたか?」
一期が心配そうに聞いてくるが、
「何も」
ごまかした。危ない危ない。
私が悩むと気が乱れるんだった。
「そうですか?」
物吉がよそってくれたカレーとサラダを手に広間に戻ると、清光が近づいてきた。
まだ戦闘服だ。
「着替えてないの?」
「あんまりにもいい匂いがしたから着替えるまで我慢出来なかったんだよね」
まさかだからみんな着替えもせずに食べてるのか?
「主のご飯、美味しかったよ。頑張った主にご褒美あげる」
座ってカレーを置いた私を確認すると、後ろから顔を覗き込むように抱き締めて口づけてきた。
「おい、清光なにやってんだおめぇ」
見てしまったらしい和泉守が声を荒らげた。
「べぇーだ」
それに対し清光がわざとらしく舌を出す。後ろから私に抱きついたままで。
そして私はその不意打ちのキスに清光の優しさを感じてしまって、目頭が熱くなり涙が一粒頬を伝った。
やはり昼間の素面でのセックスは感情が乱される。
「ちょと主?」
「清光が泣ーかせた」
「え?え?嫌だった?…ごめんっっ」
焦る清光に茶化す和泉守。
「違う嫌じゃない。行かないで」
立ち去ろうとする清光の戦闘服の裾を掴んで止めた。
「傍にいて」
ぽろぽろ涙をこぼしながら握りしめると、
「…ぅん」
大人しく隣に座ってくれる。
どうしたものかと戸惑ったように私の背中を撫でてくれた。
「主、やはり何かあったのでしょう?」
激しく乱れてしまったらしい気に気づいた一期が厨から出てくる。
「何もない。大丈夫」
必死で自分に言い聞かせるように呟いていると、広間の空気が変わった。
顔を上げると三日月と小狐丸。小狐丸の方は着替えてきたようだ。
「腹が減ったな」
「今日はぬしさまが作られたと聞きましたが」
一瞬強張った私に気づいた清光が緋い瞳をそちらに向け小さく睨んだ。