第10章 Beautiful life!!
朝、隣には半裸の石切丸が寝ていて、もちろん私も半裸の状態で目が覚めた。
頭は…痛くない。
昨日は多分一度終わった時点から頭痛へのカウントダウンが始まっていたのだろう。
二度目が終わった頃からはうっすら痛みが来ていた。
痛いのは痛いのだが、すぐに睡魔に呑まれるため、我慢する時間は短くて済む。
やはり光忠と見つけた方法は効果あるようだ。
石切丸の寝顔、見るの初めてかもなんて思いながら少し身体を起こし眺めていると、目が開いた。
「主…おはよう」
「おはよう、石切さん」
返すとなんだか不思議そうな顔をして掌を眺め始めた。
「どうしたんですか?」
「いや、なんだかね、私に力が満ちているんだ」
よくわからない。
「これが無双、というやつか?」
そう言って今度は私の額に手を伸ばした。
「やはり…主熱が出ているよ?頭痛は?」
「へ?頭痛はないですけど…」
確かになんだか火照るけど、寝起きだからくらいにしか思っていなかった。
「ならば早いほうがいいね」
石切丸は起き上がり着物を纏う。
「加州さんが羨ましいなと思ってはいたけれど、私にも主の愛を与えてもらえたのだね」
「…愛、ですか?」
私も出来ないながらに起きて浴衣を羽織り、帯を適当に前でぎゅっと縛った。
「何だいその結び方!?」
「…できないから」
「加州さんは教えてくれないのかい?」
「清光がやりたいみたい」
石切丸は小さく溜め息をついて少し手直しをしてくれた。
「こんな結び方をさせていたら加州さんに怒られそうだけど」
なんて言いながら。
「薬研さんに熱冷ましはもらったかい?」
「はい。部屋にあります」
「ならばそれも早いほうがいいね。主の部屋に行こう」
まだ早朝の屋敷を並んで歩き、私の部屋まで送ってくれた。
「今日は主とても忙しいのだろう?」
「うん。厨当番になっちゃったから」
「主に当番をさせるだなんて、何を考えているんだろうね」
石切丸が眉をひそめた。
「早く飲んで熱を下げるんだよ?私はすぐにでも隊を組んで出陣してくる」
「はい。行ってらっしゃい、よろしくお願いします」
石切丸を見送り、私は薬を持って厨に向かった。
無双、かぁ。
私の想いが強いと男士は無双になり、男士の想いが強いと私は頭痛になる。
なんだか不公平だな、なんて思った。