第9章 大袈裟
「ぁっ、あっ、んん、ぃ、ちご、さ…」
「もう、限界ですか?」
膝がガクガク震えて立っている自信がない。
「おねがっ、もぅやっ、だめ、だかっ」
涙が溢れだして止まらなくなってきた。
「主?」
「んっ、もっ、あぁ、イくっんん」
絶頂を訴えながら迎えた私のなかで一期も終われたようで。
抜け出るとそのまま後ろからきつく抱き締めてきた。
「泣かないでください」
「ごめ、なさぃ。も、ごめ、なさ…」
どうしたらいいのか判らない感情が込み上げてくる。
「私、がここに居たいって言ったから、みんなに負担かけ、て。こんな汚いこと、させて…」
その場に座り込んで顔を覆った私に、脱がせた着物を羽織らせ、
「汚い、とはどういうことですか?」
聞いてくる。
「私は主を抱きたいから抱いたのです。それが汚いことなのですか?」
「わか、ない」
ぐずぐずになってしゃくり上げる私に、
「男士からの貴女への想いが強ければ強いほど、貴女は感じ、抗う頭痛がするのですよね?でしたらこのままお眠りください。目覚めたときに頭痛がすれば、私の主に対する想いが本物だと言うことが判るのでしょう?汚い感情なら頭痛はしないはずです」
私を抱き締めると、眠るように促してくる。
確かに凄く眠たくはなってきているけど…。
「一期、さん」
「どうしました?」
「ありが、と」
そう伝えるのが精一杯。またあの方法が試せなかった。
何もかもが怖くて苦しくて、涙を流したまま私は眠りに落ちた。
目覚めたのは小川の側の大きな木陰の中だった。
さすがに眠っている私に着付けるのは不可能だったのだろう。
ほぼ半裸の状態だ。一応腰のあたりには一期のジャージが掛けられ目隠しはされていたが。
「目が覚めましたか?」
「ぅん…っっ!!」
身体を起こそうとした瞬間、激しく痛む頭。
一期の想いが偽物ではないという証拠。
「大丈夫ですか?」
「っっ、凄く痛い」
それでも無理矢理起きようとする私を一期が支えてくれた。
「私の想いがウソでないことは証明できましたが、この状態はいろいろ困りましたね」
ここからじゃ屋敷まで歩いて帰るのも、むしろ背負って帰ってもらうのにもさすがに無理がある。
「ごめ、なさい」
「なぜ貴女はすぐに謝るのです?」
「ごめ…」
また謝罪した私に一期は苦笑した。