第9章 大袈裟
小狐丸と湯船に浸かりながら、
「貴女はずっとお若いままですよ」
「私の老化は止まったと?」
「そうです。私たちの時の流れに合わせ始めておりまする」
「…もっと若い頃で止まりたかったな」
口を尖らせてそう言うと、
「今のぬしさまが好きなのでダメです」
小狐丸が一蹴する。
「どうして?若いほうがハリもあるし可愛いし弛んでないじゃない」
「私は今の柔らかいぬしさまが好きなのです。それに今よりお若いぬしさまでしたら私たちを受け入れられなかったでしょう」
付喪神様は熟女好きなのかな。胸も柔らかいのがお好みみたいだし。
ただのハリのない脂肪の塊なのにね。
「…まぁこんな私でも愛してくれるんならいっか」
「私は何度ぬしさまを愛しても飽き足りませんよ」
そう言って私の唇に口づけた。
風呂から上がると脱衣所には私に着付けをするため清光が既に来ていた。
「清光おはよう」
「おはよー主。今日も可愛くしてあげるねー」
バスタオルで私を包んで水滴を吸わせる。
しかし、
「…何これ」
清光の手が急に止まった。
「なぁに?」
「何でキスマークつけられてんの?俺だってまだつけたことないのに!!」
親指と人差し指で私の首のその場所をつねる。
「ったいよ、清光」
「むかつく!昨日誰?」
「大般若長光殿ですよ」
小狐丸が身体を拭きながら返した。
「もーだから言ったじゃん!大般若には喰われるって!!むかつく!むかつくむかつく!」
「清光…」
「むかつくから上書きする」
言うが早いか清光の唇が首筋に触れ吸い上げた。
そしてそれはそこだけでなく複数の場所にいくつもの華を咲かせる。
「可愛くデコってあげたから」
満足そうに私に言って笑顔を見せながら襦袢を肩に掛けた。
「ねぇ清光。やっぱり下着は…」
「ぜぇったいダメ!和装は身体のライン消してなんぼでしょ?」
「お願い。恥ずか死ぬからパンツだけでも…」
懇願する私に根負けしたのか、
「じゃーいいよ。パンツだけだからね。ブラはしちゃだめだよ!?」
不服そうに顔を歪めながらも私に無事着付け終えると、最後に一度ぎゅっと抱き締めてキスをした。
そして小狐丸に、
「今日の主も可愛いでしょ?」
って自慢気に言う。
私にとってはそんな清光の方が可愛くて仕方がなかったけども。