第9章 大袈裟
「おい、主?起きろよ。どうした?」
意識の向こう側でなんだか大般若が慌てている声がする。
「まずいな」
そう言って一時静かになった。
そのあと聞こえてきたのは石切丸と小狐丸、そして三日月の声。
「主が起きないって?」
「何があったんですか??」
「お主は一体何をした?」
それに対して大般若は、
「特に変わったことはしてないと思うが。あんたらに言われた通り主を抱いただけだ」
「…そこに余計な感情は挟まなかったか?」
大般若に対する石切丸の声は氷のように冷たい。
「…最後にひと月と言わずずっと居たいと願ったが…」
「それだな」
どうしてそれがいけないの?
私だってみんなとずっと一緒に居たいのに。
そう思った瞬間目が開いた。
「主!?」
気づいた石切丸が私を呼ぶ。
しかし身体が動かない。金縛りってひょっとしてこんな感じ?
目玉だけを動かして様子を伺う。
「すまんな、主」
三日月はそういうと私の顔を覗きこむようにしてくる。
どうにもできないまま三日月に口づけられた。
注ぎ込まれる三日月の力。
「ぬしさま…」
心配そうな小狐丸の声。
私、しっかりしろ!10年後にはここに身を捧げると決めただろう?ならばそれを貫け!!!
必死で自分に言い聞かせた。
金縛りのようなものも、当然感じていた酷すぎる頭痛もゆっくりと収まっていった。
「っはっ…あ」
「大丈夫か?」
私の変化に気づいた石切丸が聞いてきた。
「…ごめん。なさい」
「俺こそすまなかった。主にそんなに負担になるだなんて…」
大般若が全力で謝罪してくる。
「大般若さん、君は知っていたはずでは?あまりに強く願いすぎると主をここに縛り付けてしまうことを」
「あぁ、知ってる。その感情が主を苦しめるってこともな。だけどどこかで舐めてた。毎日男士に抱かれてんのにいつも楽しそうに明るく過ごしててそんなになるわけないだろって…」
漸く身体が動かせるようになった私を小狐丸が抱き起こし、パジャマを羽織らせた。
「ぬしさまに触れてしまうと己の感情なんて制御できなくなりますよ。私自身もそうでした。ぬしさまを壊してしまいたいほどの衝動にかられましたから」
「皆そうなのであろうな。主、大事ないか?」
「…はい。今は、もう」
正直身体が全く動かなかったときは凄く怖かったけど。