第8章 矛盾という名の蕾
「身体は平気か?」
「平気だと思いますか?」
思わないからの昨夜の行為だったのではないか、と食って掛かりたくなる。
「いやな、主の身体は予想以上に男士たちを昂らせるのでな。壊してしまうほどに抱き続けてしまうあやつらの気持ちも判るのだよ」
「…」
「俺も、実のところもっと啼かせたかったがな」
はははと笑う三日月。
「…絶倫すぎでしょう、みんな」
「とはいえお主も求めておるのであろう?人間の女は30を過ぎてからのほうが性的に熟すそうではないか。なのにな、人間の男どもは知ってか知らずか若い方をとる。もったいないことよの」
三日月のその言い方にわずか胸がスッとした気がした。
「主はもっと求めてよいのだぞ?もっと乱れてさらけ出しても誰も咎めはしない。思うがまま、快楽を貪ればよいのだ」
「三日月さん?」
「まぁ、すぐには無理か」
また、ははと笑う三日月。
「…ほんとは、そうしたいです」
本音だ。罪悪感なんて捨ててもっと素直になりたい。
「ならばそうすればよい。今宵は大般若長光の部屋に赴け。そこでさらけ出してみればいい」
さて、茶でも飲むかな、と三日月が私を抱いたまま用意を始める。
「そろそろ下ろしては…」
「無理な要望だな。まだしばらくここに居れ」
私を抱えたままなのに器用にお茶を淹れ、私に湯呑みを渡してくれた。
「そろそろ俺が怖くはなくなったか?」
「…先程よりは」
「では、こまめに主を腕に抱え怖くはないことを身体に教え込まねばならぬな」
本当はもうあまり怖くはない。
優しく私のトラウマを聞いてくれた三日月。
皆の上に立たなくてはならないものとしての圧だったと気づいてからは、それすらも優しさに感じた。
「また新しい男士が来ましたね」
「そうだな。昨日の岩融と今剣。そして今日の浦島虎徹。審神者力が上がっているとしか言いようがないな」
「今でさえひとりひとりと向き合えてないのに、どうしよう」
「なに、心配はいらんさ。皆主のことを見て思っておる。僅かな時でもお主と共に日々過ごせればそれだけでよいのだ」
「だけど」
「文句ばかり言う口よの。いっそ塞いでしまおうか?」
「…間に合ってます」
「そうか?いつでも相手になるぞ?」
三日月との距離がぐっと近づいた気がして、なんだか胸が温かくなった。