第8章 矛盾という名の蕾
そうしていると、どこかの部隊が帰ってきた声がする。
「長谷部、お迎え行かなきゃ!」
「はい」
食事も仕事もそこそこに玄関へと急いだ。
「おかえりなさい。お疲れ様。ありがとう」
「大将!見てくれよこれ」
薬研の指差す方には大量の資材と厚が抱えている刀剣。
「顕現してみてくれ」
言われて手を翳すと現れたのは、
「俺と竜宮城行ってみない?行き方わかんないけど」
「亀さん!!!かわいい!!」
言う男士の肩に乗っかっている亀が死ぬほどかわいい。
「いや、亀がお土産じゃなくてだな」
薬研の突っ込みに、
「あ、ごめん。あまりに亀さんがかわいすぎて。初めまして…」
男士の姿を見ていると、身体に巻き付いてるような黒いテープ状のもの。既視感があった。
「ひょっとして、浦島、くん?」
「あぁ、俺が浦島虎徹だ」
わあぁぁ!大変だ。
「誰か、蜂須賀さんを呼んで!!」
言うが早いか既に長谷部が蜂須賀を引っ張ってきている。
「なんだい主騒々しい…って浦島か?」
「そう!薬研たちが連れて帰ってくれたの!」
「蜂須賀兄ちゃん!」
驚いた表情の蜂須賀に、満面の笑みの浦島。
兄弟の再会に私の表情も綻んだが、瞬間ズキンと痛む頭。
「大将どうした?」
私の表情が歪んだのに気づいたらしい薬研がそっと声をかけてきた。
「ん、頭痛くて」
「薬、作るか?」
「お願いしてもいい?」
気休めでもなんでも今は嬉しかった。が、そこへ、
「主、こちらにこい」
私を呼ぶ声が聞こえ、瞬間身体が強張った。
「三日月…さん」
手招く三日月に逆らえず薬研から離れ三日月の元へと向かった。
頭痛がどんどん酷くなっている気がする。
むしろ、鶴丸で和らいだのは一時しのぎに過ぎなかったようだ。
ゆっくりと近づく私にしびれを切らしたのか、三日月の方から私に近づきふわりと抱き上げた。
後ろから一瞬どよめきが聞こえたが、気にする余裕すらない。
「なぜ早く助けを求めない?」
「ごめん、なさい」
怖かった、嫌だった、なんて言えないけど。
できれば三日月に頼りたくなかった。
「俺でないと主を救えないのだぞ」
角を曲がり、他の男士の視線から逃れたところで三日月が私に口づけた。
例のごとく何かを注ぎ込むように舌を絡ませる。されるがままになるしかなかった。