第7章 Can you guess what?
「誰とでも、となってしまうと苦労するのは主だぞ?」
私の感情を読み取ったのか三日月がそう言った。
「しかし三日月殿、貴方は昨夜大般若殿たちには真実を告げましたよね?そのことはどうなのです?」
「あやつらは主の気のブレを感じとれる側のものたちだ。それに大般若長光は既に核心部を知っていたではないか。一期一振の方も主の力で手入れが減っていることは知っていたしな。ならば、こちらの味方として扱ったほうがなにかと便利であろう?」
昨日呼び出した三人には知られているのか。
「その三振にも主に触れることを許可したと?」
石切丸が聞く。
「そうだ。偏らんほうがいい。偏れば主の力にブレが出る」
ぎゅっと手を握り下を向いてしまった私の背中に、石切丸の大きな掌が触れた。
「三日月さんは主を苦しめて楽しんでいるのかい?」
「はっはっ、人聞きの悪い。俺はこの本丸を強くしたいだけ。仲間に深手を負わせたくないだけ。主もそれを望んだであろう?」
そうだ。時間だけじゃない。男士たちの身の保証にもなるんだ。
「…判りました」
震える声で承諾した私に、
「…とりあえず薬研さんに薬をもらいに行こうか」
石切丸が優しく声を掛けてくれる。私はただ黙って頷いた。
きっと全部熱のせい。
清光の部隊が出陣した屋敷は妙に静かに感じた。
石切丸に手を引かれ熱い身体を前に進める。
薬研のいる粟田口の部屋につくと、半分は戦闘服を着ていた。
「薬研さん、お願いがあるんだが」
「どうした?石切丸」
「主が熱を出してね、熱冷ましを作って欲しいのだけど」
「あぁ、いいぜ。…だけど俺今から出陣でな、帰ってからでも大丈夫か?」
私を見ながら薬研が聞いてくる。
「うん、大丈夫。待ってるから出陣、お願いね」
熱を持った吐息が一緒に出てしまい、ほわっと顔が熱くなった。
「ほんとに大丈夫かよ」
顔を近づけ額を合わせてきた。
「大丈夫じゃなさそうだな、これ」
そう言うとがさがさと引き出しを漁り、
「効く保証はないがこれ使ってくれ」
何かの葉っぱを渡してくれた。
「齧るの?」
「まーそれでもいいが、千切って煎じて飲めばいい」
ちゃんとしたのは戻ってから作る、と薬研は出陣していってしまった。
私の手には謎の葉っぱ。なんとなく面倒でそのまま齧るとびっくりするほど苦かった。