第7章 Can you guess what?
「え、何…か…」
昨夜のことを思い出している私に堀川が水と共に持ってきてくれた濡れた手拭いを額に当ててくれた。
「あ、私が、清光のことを好きだって思ったら、なんか清光が…」
温かい力が、とか言ってたような気がする。
「あー、確かになんか主から凄く温かい力をもらったような感覚になったけど…」
「たぶんそれだね。頭は?」
「痛い、です」
「頭痛の方はたぶん加州さんだけど、熱のほうは主、君が原因だと思うよ」
石切丸はそう言いながら私の頬に触れる。
その後ろで安定と堀川がずっと心配そうな顔をしている。
「これは私じゃどうにもならないかもしれない。三日月さんのところへ連れて行くから、加州さんだけついてきてくれるかい?」
「わかった」
「君たちには後でちゃんと説明する。すまない」
石切丸はきちんと安定と堀川にもそう言って私を抱き上げた。
石切丸はたくさんのこと、ひょっとしたら全てのことを知っているのかもしれない。
だけど、知っているだけで対処ができるほどの力はないのだろう。
誰もが何かしらの役割を持ってて、それぞれがそれを生かしている。
それぞれの場所を奪い合ったりはしない。
それできっとこの本丸は回っている。
石切丸の腕の中でふわふわとした意識をなんとか保とうとよく判らないことを考えていると、三日月の部屋についたようだ。
「三日月さん、入るよ」
雑に断りを入れて清光に障子を開けさせる。
「どうした?」
「主の気がおかしい」
私を抱いたまま三日月の前に座った。
毛並みを整えていた小狐丸も櫛を持ったまま近寄ってくる。
「ぬしさま?」
「朝から熱が凄くて」
清光が言うと、三日月は清光に近づいてその目を合わせた。
「加州、お主は今無双の状態になっておる。判るか?」
「無双?」
「朝食を摂ってすぐに出陣しろ」
「え?やだよ。主が心配だし」
眉を潜めて拒むが、
「せっかく主にもらったその力を無駄にするのか?主のために刀を振るい戦ってくるのがお前の役目なのではないか?」
三日月の正論に言い返せなくなっている。
「そうだね。加州さんにも状況はあとで説明するよ。すぐに隊を組んで行ったほうがいい」
「…わかった。主を、頼んだからね!絶対だよ!!」
言うと清光は部屋から出ていってしまった。