第6章 美しい悲劇
「あーなんだ?もう、終わったのか?」
ようやく安定の苦労が実り和泉守が起きた。
すると、安定が何かを書いた紙を私に渡してくる。
「訳しながら読んで!!」
顔は今にも笑い出しそうだ。
「兼さんまだ一杯しか呑んじょらんじゃ?もうちょっと付き合いさんね。ちゅかあんたが土方歳三ちゅうもんの刀なんかね。カッコいい顔よう見せちゃあくれん?」
山口弁に直しながらその紙を読み上げると、安定は大爆笑だ。
「は?主、お前さんどこの言葉で喋ってんだ?」
すると、続き続き!と安定。
「うちは長州の出じゃけえね。兼さんの大っ嫌いな高杉晋作の故郷のあの長州っちゃ。どねぇかたまげたじゃろ」
なかなか難しい。和泉守以外は下を向いたりしながらクスクス笑っている。
「主それ滅茶苦茶面白い!俺もやりたい!」
「僕もやりたい!紙探してこなきゃ」
清光は私から離れ、堀川も紙と書くものを探し始める。
言われた本人和泉守はぽかんとしていた。
「は?長州?主が?嘘だろ?」
「嘘じゃないっちゃ。これだけの酒が何よりの証拠じゃろうが?」
「はぁぁぁ!!!!??」
やはり情報が処理しきれなくなってしまっているらしい、和泉守は再びぶっ倒れた。
「うひゃひゃひゃ、和泉守最高!!めっちゃパニクってた!!」
私は言わされただけだぞ。何も悪くないぞ。
すると、今度はこれ読んで、と堀川が紙を渡してきた。
「うちは堀川くんのこと好いちょるけぇ今夜は…」
そこまで読んで紙を引っ裂いてやった。
「何を言わそうとしたんだ?」
裂かれた紙を集め山姥切が確認し、
「どうして兄弟、お前はさっきから!!」
堀川を叱り始める。
他の男士たちもそれを確認しては、
「これはダメだよね」
「あぁ、言霊を使うとは酔った勢いでどうにかするよりも酷い」
ちなみに、内容は今夜堀川に抱かれたいのと宣言するようなものだった。
「もうやめにしようやぁ。言うのもぶち恥ずかしいんじゃけぇね?」
「じゃあこれで終わり」
清光に渡された紙には、
「うちはみんなのことが大好きじゃけぇ、今日からひと月近くここで朝から晩まで生活しようと思いよるんよ。じゃけ、よろしくね?」
途中で引っ裂こうかとも思ったがやはり私もどこまでやれるのか実験してみたい気持ちもあった。
だから最後まで読んでやった。