第6章 美しい悲劇
「あーぁ、兼さんもう終わっちゃった」
「相変わらずだよね」
寝てしまった和泉守を見ながら、再び満たされたお猪口に口をつける。
ちらりと目線を動かすと小狐丸と目が合った。
「ぬしさま、小狐はいつ脱げばよろしいですか?今ですか?」
着物に手を掛けながら聞いてくる。
「ねぇ、さっきから何なの?それ。本当に主はそういう趣味があるの?」
安定は怪訝そうな顔をしていた。
「これは私がぬしさまに無理をさせてしまった罰なのです」
「いや罰で脱がすって変態極まりないじゃん」
安定に言われて、ぐうの音も出ない。
「まぁ、夏だし暑いからなぁ。おれも、脱ぐかな」
急に長曽祢まで服を脱ぎ始めた。
「え!?ちょ…」
思いがけない状況に焦ると、
「なんだ?おれの身体じゃ不満か?」
なんて言いながら笑う長曽祢。てか言い方!!
「いや、あの…」
「でしたらやはり小狐も脱ぎましょう」
小狐丸もするすると着物を脱ぎ美しい腹筋を晒した。
「あー、もぅ…」
とんでもない酒のつまみが並んでしまった。
「触ってもいい?」
聞いた私に、
「主!!?」
周りがざわついたが、
「どうぞ。お気の済むまで」
そろそろとにじり寄ってふたりの腹筋に手を伸ばした。
「わぁ…」
妙にドキドキしてしまう。そして、頬に、耳に熱が集まった。
ちょっとだけ、興奮する。
指先で小狐丸と長曽祢の腹を撫でていると、
「なぁ主、あんたは案外そういう方も得意なのか?」
大般若が聞いてくる。
「え…な、んで?」
「いや、触り方が妙にやらしいからな。ほら顔だって女になってやがる」
そう言われ、慌てて手を引っ込めてふたりから離れた。
「大般若殿」
一期が咎めてくれたが、
「そういう顔はよ、ふたりだけの時に見せるもんだぜ?」
口の端を上げながらそう言った。
「もームリっちゃ。恥ずかしゅうて私ここにゃおれんだい…あ…」
大般若のからかいにやられて、つい方言で喋ってしまった私に、
「おんしやっぱり長州もんじゃったがか」
陸奥守が笑った。
「そっちゃ!はぁ隠してもしょうがないけぇ、今夜は素で喋るけぇね。貴重じゃけぇよう聞いちょきさんよ!?明日にゃはぁやらんよ?」
「まっこと面白いおなごじゃ。そっちおれんのやったらこっちにきい」
陸奥守に手招きされて、私は立ち上がった。