銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第17章 傀儡と不思議な少年
『...ハイレインはそりゃ憎いけど....あの人に記憶を消されて、私、ちょっとホッとしたんだ。記憶が消えていく度私の中で私が消えるのがちょっと安心した。』
「は?なんだよっ、それ。」
『今あるのはたったひと握りの感情だけ...私はもう...とっくの昔に壊れちゃってるんだよ。』
寂しそうな笑みをを浮かべる海影に灯影は絶望した表情を向ける。
『どうせここから出たらここであった全てを忘れてしまう。ここで君と話したってどうせまた....』
「俺の事も忘れるのか?いや、正確に言うとその記憶を封印してしまうの方が正しいのかもな。」
『思い出そうとは思うの...でも....怖い...怖いんだよ...あの日の光景をもう一度見るのがっ...』
「俺の死にずっと囚われているからか?」
『....君ならよく知っているでしょ?灯影もお父さんもどうやって死んだ?』
「!!?クソッ!なんでそうなんだよ!」
灯影は絞り出すようにそう言うと、ぐしゃっと自分の前髪を掴んだ。
『ごめんね...灯影。もう、これ以上は話したくない。』
「っ!待て海影」
海影がそう呟きた瞬間
ガシャンガシャンと二人の間に茨の柵ができる。
「ミカ!ミカッ!オイ!海影っ!」
灯影は咄嗟に海影の腕に捕まえると、キツく握り締めた。
「ミカ...無理に思い出さなくていい。ここの事を覚えてなくてもいい。でも、でも!俺はあの日俺がお前にかけてしまった呪いを解きたいんだ。」
『灯影...もういい。もういいんだよ。』
「良くねぇよ!」
今にも泣きそうな声でそう訴えると、灯影は茨の柵を無理やり突き破り、海影の額に自分の額を押し当てた。
すると眩いほどの赤い光が発せられ、あまりの眩しさに目を閉じた。
「俺には...これくらいの事しか出来ない...」
『何をしたの...』
「...お前に俺のサイドエフェクトを与えた。」
『え?』
灯影は少し切なそうな顔をすると、ヘラりと笑った。