銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第17章 傀儡と不思議な少年
「《玄界とネイバーフット......悪い奴もいるけどネイバーにはいい奴もいる。俺はそいつらと仲良くなりたい。ネイバーと戦争することも無くなって、人を拐うこともなくなって、いつかネイバーも俺達も壁がなくなって欲しいって思ってるんだ。でも俺はその願いを叶えられそうにない。だからお前に託す。俺の願いを叶えてくれ。ネイバーも玄界も関係ないみんなが手を取りあった世界を俺に見せてくれ。》」
そう言うと目の前の少年の体が光り、光源が去ると同時に、身体が砂となり崩れていく。
『!(この子.....)』
自分のせいで死んでしまったんだ。
悲しい
苦しい
寂しい
もっと隣にいて欲しかった。
そんなありもしない感情が次々と流れ込んでくる。
また灯影と公平と僕...いいや"私"と一緒に居たかった。
彼に好きだって伝えたかった。
もっといっぱい話したかった。
感情が次から次へと溢れ出し止まらない。
いや、何故か止めることなんてできるわけが無かった。
『やめて!やめて!!こんな記憶僕のじゃない!!違う!!違う!!』
「海影。受け入れろ。それはお前の記憶だ。」
『違う!!こんなの!こんなの───!!』
ハイレインの所有物になったあの日から僕はただの実験動物。幾らでも替えの効く代替品であると自分自身にそう言い聞かせ、呪い、生きてきた。
この命は自分のものでは無い。
僕の飼い主であるハイレインの物だとそうやって。
だから命令が全てだし、命令がなければ生きていけなかった。
生きる価値を見いだせなかったのだ。
だから命令であればこの命を差し出すことなど厭わない。
それが僕に出来る唯一のことだとそう信じて疑わなかった。
だがそれが今、彼の言葉によって覆されようとしているのに我慢ならなかったのだ。
『違う!違う!こんなの僕の記憶なんかじゃない!!』
「ミカ....」
灯影は俯くと、すぐにキッ!と顔を上げて海影の胸ぐらを掴んだ瞬間
『僕に触らないで!!!!』
────バチン!!!!
「〜っ!!!」
胸ぐらを掴んでいた灯影の手が何者かの力で跳ね除けられる。