銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第17章 傀儡と不思議な少年
作戦は失敗した。
でもその後どうなったんだっけ?
ここが死の世界なのか、自分が生きてるのか死んでるのかさえも分からない。
真っ黒な闇に映えるほどの真っ白なワンピースを翻し、海影はただ目の前の状況に混乱し立ち尽くすしか無かった。
「思い出したか?海影。」
『灯影.....!ここはどこ!?君は一体誰なの!』
「そうだよな。今のお前には初めましてだもんな。」
『?』
「はっ。まだ思い出せねぇんだな。俺の事も何にも覚えてねぇってか?寂しいな。オイ。これも奴らの言う“ビーストトリガー“の影響かよ。」
少年はそう言うと、座っていた椅子から立ち上がり海影と間合いを詰めた。
「俺はお前が赤月って呼んでるやつだよ。」
『!』
【ミカ】
ジジジッ!!
『ッ!』
「頭が痛むか?それはお前が.....お前自身が記憶を思い出そうとしている証拠だ。」
『記憶?そんな物っ。僕には......必要ないっ!!』
「それでもお前は思い出そうとしている。本当の居場所に帰るためにな。」
『居場所?』
目の前に砂嵐が舞い、彼と同じ顔の少年が私のことを呼んでいる記憶が脳裏に流れた。
「なぁ"ミカ"思い出してくれよ。俺の事もアイツの事もお前の大事なヤツらの事も全部。」
『何を言ってるの?』
海影はドクンドクンと脈打つ自分の心臓がある当たりをきつく握りしめた。
心臓を経由して灯影の感情が流れ込んで来ている。
これは一体何の記憶なのか...
【海影】
【ミカ】
『【お父さん!"ヒカ"!】』
さっきから妙にあるはずもない記憶と感情がチラつく。
その記憶は全てさっき目の前にいたはずの"お父さん"と灯影が登場していた。
おそらくだが彼らと僕は何らかの関係があるのだろう。
『貴方は何者なの?』
「さっきから質問ばっかりだな。」
『いいから答えて。』
「.....俺はお前の心臓だよ。」
『!?』
そう海影の心臓は本物の心臓ではない。
遊真がトリオンで作られた体であるように、海影自身の心臓もトリオンによって作られていた。
そしてその犠牲が灯影だった。