銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第17章 傀儡と不思議な少年
城戸は出水が部屋を出ていくのを確認すると、海影のそばに寄り添い傷だらけになってしまった手を優しく握った。
「海影。お前のことを待っている奴は沢山いる。早く目覚めてくれ。お前まで失う訳にはいかないんだ。」
『.....』
「あれ。城戸さん。来てたんだ。」
「迅」
「さっき出水とすれ違ったけど何かあったの?」
「いや。それより海影のこと。彼に言ったらしいな。」
「出水は知っておいたはうがいいと思ったからね。」
「彼に海影の過去を受け止めるだけの覚悟はあるのか?」
「......大丈夫だよ。城戸さん。出水も海影もそんなにヤワじゃない。」
「そうか。」
「城戸さん。みんなに伝えて。海影もう2、3日したら目を覚ます。」
「.....それは“本当“の意味でか?」
そう問われた迅は言葉を濁すと、眠っている海影の頬を撫でた。
「.....戦いの最中、一瞬記憶が戻ったらしい。だから自我だけでも戻ってる可能性もあれば戻ってない可能性もある。」
「なら、自力で自我を取り戻すことができるのか?お前の予知ではどっちが可能性が高い?」
迅は黙り込むとぼんち揚をバリッと噛み砕き、海影を見すえた。
「.....戻る確率が1割。戻らない可能性が9割。少しだけど戻る確率はある。でも多分だけどアフトクラトルの未知のトリガーが植え付けられている間は海影に記憶が戻ることは無いよ。」
「ならどうしたらいい。」
「俺の予知だとガロプラが海影を元戻すヒントを持ってる。だから、その時を待つしかない。」
グッと城戸は拳を握り締めるとそのまま何も言わずに立ち上がり、部屋の外へと出ていってしまった。
「身体は帰ってきても心は帰ってこず......か。海影。本当のお前は今どこにいるんだ?」