銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第17章 傀儡と不思議な少年
三輪は脱力していている出水の手を引くとそのまま自分たちのブースへと向かった。
「出水。寝ろ。」
「は?」
「ここ最近眠れてないとも聞いた。基地に泊まり込んで太刀川さんや陽介、緑川とランク戦ばっかりしてるそうだな。」
「それ誰が言ったの?太刀川さん?」
「話を逸らすな。今日は奈良坂たちも来ない。静かに寝れる。」
「寝れねぇからいい。」
「なら寝れなくてもせめて何か食べろ。持たないぞ。」
そう言って呆れた様子の三輪は袋に入っていた、手軽に食べれるおにぎりやサンドイッチを出水に突き出した。
どうやら食堂の人に無理言って作ってきてくれたようだ。
「悪ぃな....三輪。俺、今食欲ねーわ。」
「またそれか。」
「悪ぃ.....」
「寝れないならせめて食え。海影はお前が倒れることを望んでない。」
「それは...そーだけど。」
「また何か頭から離れないのか?」
「うん......まぁ、うん。そうだな。」
そういうと出水はつい数分前の出来事を思い出した。
それはちょうど風間と忍田が到着した時まで遡る。
───数分前
「迅。風間、慶、小南、出水くん。遅くなってすまない。海影の様子は?」
「あ、忍田本部と....三輪....」
「迅。海影は?」
「それが....」
説明しようと口を開いた瞬間
今まで閉ざされていた扉が開き、中から酸素吸入器をつけた海影と手術服に身を包んだ医師が出てきた。
「御家族の方は....」
「代理ですが私です。海影の容態は....」
「先生。海影は」
風間と忍田が急いで駆け寄ると医者は難しい顔をして説明を始めた。
「処置はしましたが.....助かったわけではありません。非常に危険な状態で、予断を許さない状況です....我々も全力を尽くしますが目覚めるかどうかは.....。それに────」
それを聞いた風間と忍田は少し目線を出水に向けると何も言わず視線を医者へと戻した。
医師はそんな彼らを気にすることなく淡々と言葉を続けると忍田も風間も信じられないという顔を浮かべる。
「────とにかく我々も全力を尽くします。」
それだけ言うと医師は忍田たちの前から去っていってしまった。