銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第17章 傀儡と不思議な少年
海影にとって自分のせいで誰かが犠牲になるのは3回目だった。
1度目はまだネイバーなんて知らない頃にトリオン兵に拐われそうになった海影を助けようとして目の前で父が死んだ
2度目は戦争でネイバーの攻撃に被弾し死にかけた自分を助けるために目の前で双子の兄が死んだ。
3度目は仲が良かった親友だった。
こちらは喪った訳では無いが、目の前で連れ去られるのを黙ってみることしか出来なかった。
海影にとってこれ程辛いことは無い。
母も2度目の灯影が死んでからおかしくなり、父が死んで元々折り合いが悪かったが更に折り合いが悪くなってしまい、今は一緒に暮らしていない。
今は何度か面会などを繰り返しているがそれでも海影は母と会おうとはせず、灯影が死んですぐは海影は家に帰ることがなかったほどだ。
初めてそれを思い知らされた時どれほどネイバーを憎んだだろうか。
「.....」
「あ、今ありえないって思ったでしょ。」
「はい。」
「でもそれと同時に自分のことも憎んでいるんだ。だから海影はあの戦争を経験して、トラウマを持ってしまってもボーダーに残った。」
「え.....(トラウマ?)」
「さて。俺が話せるのはここまであとは海影自身に聞きな。そこで隠れてる誰かさんもね。」
「.....迅。さっきのは本当か?」
「三輪!」
迅がチラリと扉の方に視線を向けるとガチャとドアが開き、扉の外から三輪が現れた。
「海影がネイバーを憎んでるって本当か?」
「本当だよ。海影はネイバーに復讐したいと思ってる。だからボーダーに居る。まぁ別の目的もあるけどな。」
「.....なら何故だ。何故簡単に空閑を受け入れれた。ネイバーを憎んでるはずならできないはずだ!」
「そうするしかなかったんだよ。」
「そうするしか無かった?」
「海影だってわかってるんだよ。ネイバーにもいい奴がいるって。城戸さんの目的を達すためにも遊真の協力は必要だ。だから自分の憎しみを押し殺してまで受け入れた。ただそれだけの話だよ。」
「憎しみはそう簡単に消えるものじゃない。」
「そうだね。まぁ本人の心の有り様なんて本人にしか分からない。もう2、3日すれば目が覚めるはずだからその時海影が正気だったら聞いてみたらいい。何でネイバーを憎みながらも受け入れたのかさ。」
そういうと迅は踵を返す。