銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第17章 傀儡と不思議な少年
「迅。海影の容態は?」
風間が深刻な様子で問いかける。
「自分で心臓に刃を突き刺した。運んだ時にはもう既に手遅れ寸前....正直助かるかは賭けだって。」
「何それ!迅!何で自分の心臓なんて!」
「ハイレイン。アフトクラトルからの命令から俺たちを守るために自決しようとしたんだ。暴走する自分を止めるためにな」
「.....」
「.....お前の予知でも分からないのかよ。」
「.....正直五分五分ってところ。助かる未来もあるし助からない未来もある。」
「どうにかする方法はあるんですか。」
「ないよ。今回ばかりは無い。運と海影の生命力に任せるしかない。」
「嘘だろ.....海影。」
「出水!」
力無くガクッ!と崩れ落ちると、ただ悔しそうにガンッ!!と床を殴りつけた。
そんな出水に太刀川が急いで駆け寄る。
「何で、何でいつもアイツなんだよッ!」
出水はそう呟く。
だが、それは出水だけが思っていたことではなく、その場の全員が胸の内に抱えていた。
手術が始まってどれぐらいの時間が経過しただろうか。
みんなただひたすらに手術室のランプが消えるのを待った。
すると慌てた様子の看護師が手術室から出てきた。
「誰かトリオン供給をさせて貰えませんか!?」
【!?】
「海影さんのトリオンがもう無く、心臓が修復しません!どなたか、手遅れになる前にトリオンを分けてください!」
焦る看護師を前に誰もが黙り込んでしまう。
太刀川も小南も風間もトリオンを使い果たしてしまっている今から雨取を呼んでも遅いだろう。
どうしたものだろうかと悩んでいると出水が手を挙げた。
「......俺のトリオンを使ってください。」
「出水!お前っ」
「雨取ちゃんが来るまでなら俺のトリオンでも何とか持つでしょ。」
「だが」
「俺もアイツを救いたいんです。」
出水は海影とお揃いで持っていたネックレスを握りしめ、覚悟を決めた。
「わかった。無茶はするなよ。」
「ではこちらへ。」
器具をつけられる中、出水はただひたすらに祈りを捧げた。
彼女が無事であることをひたすらと。