銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第14章 囚われた銀翼
「おや?こんにちは。ミカゲ殿。」
『こん、にちは、ヴィザ翁...』
「今日はトリガーホーンを植え付けると聞いてきてみましたが、どうやらもう終わっていたようですね。よく似合っておられますよ。ミカゲ殿」
『ありがとう、ヴィザ翁。』
「今日は何を読んでいるのですかな?」
『アフトクラトル...の、歴...史。の本、読んでる。』
そうカタコトで話す海影の顔には感情がない。
あれほど美しかったアメジストの瞳も今はラピスラズリのようにくすんだ青色へと変わっていた。
そしてなにより特徴的だったのは左目にはアフトクラトルの紋章が刻まれていたことだった。
寄生型トリガー【ビーストトリガー】はその名の通り、適合者の精神を壊し、人としての尊厳を奪い。
ただ命令に従う獣へと変えてしまうトリガーだ。
そこに本人の意志など関係ない。
むしろそんなのは邪魔だからと、記憶も意思も全て消されてしまう。
その実験を受けた海影も例外ではなく、現に玄界にいた頃の記憶はほとんどないらしい。
その証拠に所有者であるハイレインの命令1つで動く人形と成り果てていた。
適合できなかった人間はだいたい廃人化や奇形になるのが定番だが、さすが適合者と言うべきだろうか多少の意思が残っているのだろう。
こうしてハイレインの命令がない時は、本を読んだり、カタコトながら言葉も話せるし、普段は自分の好きなことをして過ごしている。
「まだ若いあなたからしたら、そんなもの読んでも面白くはないでしょう。」
『そう...でも、ない。おもし、ろい。僕が...知らないコト、いっぱい書いてある。』
「ははは。ミカゲ殿は勤勉ですな。ああ、そうでした。貴方、ハイレイン殿の命令でこれからガロプラに行くそうですね。」
『...うん...玄界、追って...来ないように...足止め、しに行く。』
「辛くは無いのですか?」
「なんで?」
「仮にも貴女の故郷であり、元仲間がいた場所ですよ?そんなところを攻撃するのは心苦しくないのですか?」
『...』