銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第14章 囚われた銀翼
海影はヴィザの問いかけに迷うように黙り込むと、しばらくして口を開いた。
『ハイレインの、命令...は。絶対だから...それに僕には玄界にいた...頃の記憶が、ない。』
「そうですか。」
『でも...玄界...って聞くと、ここが苦しくなる。』
胸の当たりを指し示した海影にヴィザはなんとも言えない気持ちになる。
「...これを持って行きなさい。」
そう言ってヴィザはポケットからネックレスを取り出した。
ネックレスはトリオンキューブのようなものが着いており、銀製のものだった。
「貴女がかつてつけていたものです。貴女が大切に思っていた人から送られ、大切にしていたようですしお守りとして持っていくといいでしょう。」
『ありがとう、ヴィザ翁。』
どこか見覚えがあるような....海影はおもむろにそれを受け取ると、じっとそれを見つめた。
するとザァーザァーと目の前に砂嵐が流れ、一人の少年が笑って差し出してきたのを思い出す。
『!?』
「ミカゲ殿?どうかしましたかな?」
『...いや、なんでもない。』
首を振り、そのネックレスを首につける。
そしてピョンッと座っていたハシゴから飛び降りる。
実験体ようにと作られた検査服をふわりと翻しぺたりと地面に足をつけた。
その足は素足で、実験の痕なのかいくつもの包帯が巻かれていた。
「ミカゲ。出発の時間よ。」
何も無い空間から声が聞こえ視線を向けると、大窓が開き、ミラが現れた。
『わかった。ヴィザ、もう、出発、しないと行って、来る。』
「ええ。行ってらっしゃいませ。帰ってきたら、遠征の話を聞かせてくださいね?」
『うん...じゃあね。』
バイバイ。と抑揚のない声で去っていく海影をヴィザは見送ると、はぁと大きくため息をついて椅子の背もたれにもたれかかった。
「(ハイレイン殿も酷なことをなさる...記憶が無いとはいえ、元の仲間をその手で傷つけさせるとは...)
全てを思い出した時心が壊れなければいいですが...」
ヴィザの悲しげな声が響く。
しかし、それだけ海影の耳には届くことなく、海影はただ命令を遂行するためだけに、ガロプラへと向かうのであった。