銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第12章 大規模侵攻
「お....。ろ...。ぎん....り。」
『...ん』
遠くから声が聞こえる。
声は波紋のように広がり、意識の中で木霊して響き渡る。
ゆっくりと暗い海の底に沈んでいた意識を浮上させると、腹部に謎の激痛が襲い、目を開けた。
『い、たいっ!』
「起きたか。」
目を開けた先には自分を連れ去ったハイレインがベッドに腰掛けこちらを見つめていた。
『こ、ここはっ...いっ』
「あまり動くな。塞いだ傷が開くぞ。」
『随分心配してくれるよねっ。』
「優秀な駒の心配をして何が悪い?」
『は?何言って...』
「お前は今日から私の部下になってもらう。もちろん逆らえば賢いお前ならどうなるかわかっているな?」
『C級を殺すつもり?』
「ああ。大人しく従えばお前も、雛鳥たちも身の安全は保証してやろう。好きな方を選べ。」
逃げ場なんてない。
Yes以外しか答えがないとわかっていながら、こいつは言っているんだ。と海影は瞬時に理解した。
辛酸を舐めるとはまさにこの事だな。
どこか皮肉な笑みが海影からこぼれ落ちる。
あまりにも沈黙を貫く海影にハイレインは呆れたようなため息を漏らすと
「もうすぐ本国に着く。それまで大人しくしていろ。」
シレッとした様子でそう言ってベッドサイドから離れ、部屋から出ていった。
部屋を出ていったのを確認して海影はいつの間にか着せられていた真っ白なワンピースを握りしめると、そのまま体育座りをして震える肩をキツく抱き抱えた。
『クソッ!クソッ!クソッ!!』
恐怖を紛らわせるように、海影は今にも泣きそうな声でそう言い続ける。
どれくらい時間が経っただろうか。
混乱していた思考がようやく落ち着き、海影は顔を上げる。
するとタイミングよく部屋のドアが開き、ミラが現れた。
「本国に着いたわ。」
ミラはそう言うと海影の腕に繋がれた点滴の管を外し、手に持っていた拘束具を海影に取りつける。
両手、首につけ終わると、ミラが少し大きめのマントを海影に被せる。
そしてまるで犬を部屋から連れ出すように、首に着いたリードを引っ張り無理矢理部屋を連れ出した。
「ハイレイン隊長連れてきました。」