銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第12章 大規模侵攻
「う、うわあぁぁぁっ!!」
ゲートが消えた瞬間
あれだけ曇っていた空が晴れ渡る。
しかし、美しい緋色に染まった空とは反対に修の悔しそうな叫び声が響き渡った。
「メガネボーイ!」
「メガネ先輩!」
声を聞き付け、駆け寄ってきた米屋、夏目の2人は血まみれで倒れた修を見て絶句する。
「千佳、を頼む。それと...海影せ、んぱい..を!」
絞り出すような声でそう言うと夏目にキューブとなった千佳を手渡すと同時にプツリと糸が切れるように修は意識を失った。
「メガネ先輩!」
「ヤベーな。血ぃ出すぎだろ。傷だけ縛って基地の医務室に運んじまおう。病院よりそっちの方が早えーや。」
「了解っす!」
2人は互いを見てうんと頷くとすぐに修の傷を縛り、米屋が修をおぶって基地の入口へと駆け出した。
気を失った修の傷に触らないように慎重且つ迅速に医療班に引き渡すと、
「米屋!!」
すると聞きなれた声が聞こえ、視線を向けると焦った様子の出水の姿が目に入る。
「海影は、海影はどこにいる!」
錯乱した様子の出水はまるで縋るように米屋に問いかけた。
今までに見たことがないその様子に何も言えなくなると、ゆっくりと顔を逸らした。
「おい!それどういうことだよ!応えろ!米屋!!」
「出水くん、落ち着いて!」
激情した出水を落ち着かせるように、国近が声をかけるが、その声が聞こえていないのだろう。
勢いに任せ、米屋の胸ぐらを掴む出水。
「...着いてこいよ。」
絞り出すような声でそういった米屋は基地の入口前まで出水を案内する。
そこには、見るも無惨な光景が広がっていた。
遠征艇のゲートがあったであろう場所に残された真っ赤な道、そしてまるで消えたかのように途切れている道を見て出水は絶望しその場に膝から崩れ落ちた。
「あ゙あ゙...あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!」
絶望に打ちひしがれ泣き叫ぶ出水を見て、米屋はただ悔しそうに唇を噛み締め海影が連れ去られる一部始終を思い出す。
連れされるというのに海影はどこか安心したような笑みを浮かべていた。
そして胸元に手を当てて、『ごめんね...公平』とパクパクと口を動かしていた。
その姿があまりにも痛々しく、それ同時にどこか諦めのようなものが見て取れた。
「海影...」
苦しげに呼ばれたその名は誰の耳にも届くことなく、空へと消え去った。