銀の鳥に幸せのトリガーを....【ワールドトリガー】
第12章 大規模侵攻
「あと少しだったな。」
そう言って勝ち誇ったようなハイレインを見て海影が身構えた時腹部に鈍い痛みを感じた。
腹部に深い傷があったのだ。
『(クソっこれじゃ...)』
逃げられない...そう思った。
トリオン体であれば動けない修と千佳を背負って何とか逃げれる手もあるが、あいにくトリオンはさっきの自爆で使い果たしてしまった。
オマケに米屋も遊真も三輪もここに駆けつけるにはまだ時間がかかるし、おそらく間に合わないだろう。
もうここで詰みだ。
これが正しい判断かは分からない...いや、多分間違った答えだ。でも今はやるしかない。
苦い顔をした海影はチラリと修を見ると、ハイレインの前に両手を上げて、進み出した。
『降参...降参するよ。投降する...』
「ほう?」
『だから...お、修達には手を出さないで。私のことは好きにしていいから。』
「海影先輩!?」
背後から修の焦る声が聞こえる。
ハイレインはニヤリと笑うと海影の首を乱暴に掴みあげる。
海影の身体は軽々と持ち上げられ、地に足が着いていておらず、自身の体重で気管がじわじわと締め付けられていく。
『グッ!』
「そんな話が通るとでも思うのか?」
『通る...よ。私は、アンタらが狙ってる...金、の雛鳥よりトリオン量もあれば...ブラックトリガー、も持ってる...隊を退くだけで、マザートリガーになり得る人材と...ブラックトリガーが手に入る、んだ。これほどいい条件はない、でしょ?』
小馬鹿にするようにでもどこか縋るように話す海影にハイレインはさらに笑みを深めると、意識が飛びかかっている海影の首を離す。
『ゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ...』
離された身体は重力に従い、地面にドサッ!と落ちると、締められていた気管に必死に空気を取り込む。
潰れかけていた肺に酸素が送られ、海影はなんども重い咳を繰り返すと、腹部からさらに血が溢れ出した。
あまりの痛みに海影はギロリとハイレインを睨みつけた瞬間
心臓から嫌な音が鳴った。