第9章 Drunk Sweetie
二人は漸く宿にたどり着いた。
「一緒の部屋がいいんじゃないの? 一人じゃ寂しいんじゃない?」と、少々しつこく揶揄ってくるカカシには、ちょっと強めのカカシ直伝の拳をお見舞いして別々の部屋へと入ってゆく。
室内はお風呂とトイレも別だし、い草の匂いが立ち込めていて、とても清潔で過ごしやすそうだった。
さきはふと、クローゼットの近くにあった壁掛けの全身鏡に映る自分を見た。
『へぇ~。なんか...私も様になってるんじゃない?』
真新しい木の葉の額当てを首に巻いた自分の姿は、いつもよりちょっとだけかっこよく見えた。
先程までの落ち込んだ気持ちが不思議と高揚してクルリとその場で一回転する。
まるで新品のランドセルを背負った一年生のような気分だ。 頑張らないと!と自然と気合いが入る。
『あ、そうや。 カカシが木の葉にいる間に修行に付き合ってもらおう。』
思い立ったら即行動。
ほんの秒で自室のドアを開け、さきは隣のカカシの部屋へと軽い足どりで向かった。
...ここまで、さきが自分に与えられた部屋に入ってから、わずか数分のことだった。