第8章 火影の合否判定
スルッとさきの首元を何かが通り、静かに重みを残した。
しかしさきが感じたのはその感覚のみで、拘束されるような気配は無かった。
(え...何が起きてる...?)
「目を開けよ、さき。」
穏やかで包み込むようなその声を聞き、さきはフと目を薄く開いた。
「任務ご苦労じゃった。 お主は合格だ。」
目の前には、優しく嬉しそうに微笑む火影様。
え?さっきの剣幕はどちらへ...さきは分かりやすくも狼狽えた。
そして、さき、と自分の名を呼ぶ、低くて優しい声が背後から聞こえた。
『え......?』
ゆっくりと振り返ると、そこにはカカシが立っていた。
(火影様に呼ばれたのはカカシ...?)
「おめでとう。それは木ノ葉隠れの里の忍である証だ。」
大きな瞳を揺らして戸惑うさきに、ニッコリと目を細めてカカシも笑う。
(“それ”って...?)
疑問に思ったさきは、先程からしっかりとした重みを感じる首元を確認する。
するとそこには、あの白いマフラーの代わりに、木の葉のマークが彫られた紺色の布の額当てが巻かれていた。
「夜野さき。お主は立派な木の葉の忍じゃ。 本日より下忍として、この里をこれからも護ってくれるか?」
改めて、三代目火影はこの試験の合否を口にする。
さきは感極まり、目にうっすらと涙を浮かべ、
『......よろしくお願いします...』と、火影様に深く深く頭を下げた。
彼は満足そうにパイプをふかしながら、ホッホッホといつもの様に笑っていた。