第8章 火影の合否判定
一通りの話を静かに聞いていた火影様は、いつものごとく手にしていたパイプに火をつけて、大きく一口吸い込んだ。
そして紫煙をゆっくりと吐き出しながら、さきの方をスイと見やる。
再び合った目は、先ほどまでの穏やかなものとは違っていた。
「...つまりさきよ。お主は任務を放棄したというのか。」
『...はい。結果的には放棄しました。』
「なぜじゃ!! お主は仮にも忍という立場であろう。 ワシは命令したはずじゃ。“必ず遂行せよ”と。 忍の世界のルールを破ったその理由を言うてみろ!」
バン!!と怒りをあらわにし、火影様は机を叩く。
その剣幕に、思わず背けたくもなってしまう視線を、さきは必死に彼に向け続けた。
『...私は...私には木の葉の里の仲間を...困っている人を見捨て、その方々にとっても里にとっても財産になる宝を捨ててまで、任務を遂行することは出来ませんでした...!』
「それが、掟やルールに背くこととわかっていてもか? 何故そう思うた。」
きゅっと拳を固く握る。
正しいのか正しくないかはわからない。でも...
『忍の世界の...ルールや掟を守れない人は許されないのかもしれません。 ですが私は仲間を守れないということが...大切にしないということがそれ以上に許せません!
これは自他ともに於いてです! 私のこの判断が許されないことなのであればどんな処罰でも受けます! でも...私は後悔していません!』
はぁっ...と半分は勢いに任せて、心の内を火影様にぶつけた。
気まずい沈黙が二人を包む。
まずかった...だろうか...やはり......さきは下唇を軽く噛んだ。
「そうか、よく分かった。 ...そこに居るだろう。入れ。」
火影様は漸く開いた口で、誰かを火影室に呼んだ。
ガチャとドアノブの回る音のみ響いたが、足音や衣擦れの音が聞こえない。
自分を罰するために呼んだ別の忍だろうか。
(...やっぱり私、この世界では生きられへんのかな...)
ぎゅっと固く目をつぶり、『仕方がない』と覚悟を決めた。
__________ その時。