第6章 衝動…?
カカシは一瞬、何が起こったのか分からなかった。
「え」と、声が漏れたかもしれない。
固まるカカシの胸には、密かに特別な想いを積み重ねている彼女がいた。
柄にもなく頭が回らない。
思考が作用しない。
「......さき...?」
ふらついただけか?とも思った。
だが、自分の服をやんわりと掴むその両手が、そうでは無いことを証明していた。
カカシは返事のない彼女を、このままどうすれば良いのか考えた。
「......どうした?」
恐る恐る尋ねる。
『......んーん...』
さきは力なく声を発した。
同時にゆるく服を握る手に、ほんの少しだけ力が籠るのを、カカシは見逃さなかった。
良いか悪いかは分からなかった。
でも、“そういうこと”なんだろうと思った。
カカシには彼女を拒む理由は何も無かった。
行き場を失っていた右腕を、彼女の後頭部へ静かに持ち上げ、できるだけそっと、ゆるく、優しく自分の方へ引き寄せた。