第5章 私の先生、初めての生徒
クナイを投げ切り、地面に足をついたさきはくるりとカカシの方へと体を反転させ、『......カカシせんせぇ~...』となんとも情けない声を発した。
『ダメだったかも。』と、顔を両手で覆い、正直な手応えを話したさきに、「どうかな...ま、ちょっと待ってろ」とだけ残して、カカシは的の回収に向かった。
先程すべての的を射ていたさき。
今回は回収と共にロープが切れているかを確認していく。
(...ん?...あぁ、さきがダメだったかもと言ったのはこの的ね。)
そのうちの一つは、確かにロープが切れていなかった。
というのも無理はない。
カカシの仕掛け方が甘かったのだろう。
ロープを固定していた木製の杭は、昨日降った雨にぬかるんだままの地面に刺していた。
そのせいでクナイの勢いをいなし、杭ごと外れた的が、仕掛けた位置から少し離れたところに転がっていたのだ。
カカシはそれら全てを回収し、さきのもとへと戻る。
『ねぇ...あかんかったやろ?一個......』
そう言い、さきはシュンと肩を落として、修行不足だとひとり反省会を始めだした。
勢いがなかったのかとか、角度が甘かったのかとか、真面目に自分の行いを振り返ってブツブツと独り言を並べる。
「ダイジョーブだよさき。 確かに切れていなかったロープはあったが、あれはオレのミスだ。お前のクナイは全てのロープを捕らえていたよ。 随分と成長したな。」
カカシは、ポスッとさきのこぢんまりとした頭に手を置いてやる。
彼女はこれが好きなようで。
頬を淡いピンクに染めた後、『ほんまに?!やった!』とこれまた分かりやすく喜んだ。