第72章 mew
「忍猫と口寄せの契約を結びたい?」
『はい…契約できる忍猫を猫又様なら紹介してくれるんじゃないかと猫バア様に伺って…ただ、ここにたどり着いたのは本当に偶然で…!契約を結ぶ前に口寄せの印を結びながらチャクラを練っていたら思いがけず術を使ってしまって、気付いた時にはもうここに…』
「なるほど、そういうことかニャ」
猫又は少し難しそうな顔をして、暫く考え込んだ後、じぃっとさきの顔を眺めた。
「うむ…。お前、家族は忍かニャ?」
『いえ、ちがいます。とはいえ、両親とも数年前に亡くしているんですけどね』
「数年前…なら、誰かに似ているだとか言われたことはないかニャ?」
『いいえ全く』
「ふむ……」
猫又は再び黙り込み、瞳孔を丸くさせたり細めたりしながら更によくさきを観察した。
そしてふとそれまで動かすことのなかった腰を上げ、自分についてくるように言った。
さきは猫又がいた大きな簾の更にずっと奥へと案内された。
近付いてきたのは巨大な部屋や巨大な簾ではなく、人間にはちょうど良い大きさの入り口。
見上げる程に大きかった猫又の体は、その入り口の前でスルスルと小さくなり、ちょうどその扉からすんなりと出入りできるほどの大きさに変化した。
「中へ」
猫又は器用に扉を開け、奥に進むよう促した。
導かれるままに部屋へと入るさき。
バタン、と扉が閉まる音が響いた。
その時。
「人間の臭い……」
少し高くて気品に溢れる女声が響いた。