第72章 mew
『…え?…え、なに』
「ミャーーオニャン…ニャーーオナーン…」
何を言ってるのかさっぱり分かりなどしないが、恐らく声の主は簾の向こうの大きなチャクラの持ち主と一致しており、またそれは自分に向けて何かを訴えようとしていることだけは容易に予測がついた。
(そうだ…猫耳カチューシャ!…ほんまに効くんかなコレ…)
半信半疑ではあったが、ポーチに押し込んでいたカチューシャを取り出し、耳の後ろ側に引っ掛けるようにして頭に装着した。
すると…
「何度も言わせるニャ…お前はいったい何者ニャ。
人間がノコノコとこんなところまで…部下たちはどうしたニャ!」
(き、きこえた!!)
さきは咄嗟に自身の耳を手で覆った。
一体どんな仕組みなのだろうか。
本当に不思議なことに、このカチューシャを付けただけなのに、猫の言葉が人間の言葉にリアルタイムで翻訳されてダイレクトに聴覚を刺激した。
『はっはじめまして!あの少し…道に迷ってしまいまして!怪しいものではございません!』
「迷った?…貴様ここがどこだか分かってるのかニャ」
低く唸るような声は明らかに不機嫌さを増した。
『わ、分かりません…』
さきは正直に答えた。
「質問を変えるニャ…貴様はワシのことを知ってここに来たのか?」
その問いに、『いいえ』と答えようとしたその時、大きな簾がバサリと音を立てて捲られた。
『なっ…』
「ワシは猫又…忍猫界に人間がノコノコと何の用ニャ…?」
大簾から現れたのは、先程猫バアに見せてもらっていた肉球大全の中にあった、最も大きな肉球をもつ忍猫…そして彼女が会う約束を取り付けるはずの猫又本人だった。