第68章 予選開幕-4-
しかし、その感動もつかの間。
「ナルト!遠慮なくいかせてもらうぜ!」
キバの手から、何やら小さな丸薬のようなものが赤丸の口に投げ入れられた。
それを飲み込んだ途端…
「グルルル グルルル…ガウウッ!!」
赤丸の真っ白だった毛が赤く染まり、気性が荒く変わった。
「兵糧丸か?!」
カカシも犬塚家の戦いはあまり間近で見たことがなかったのだろう。
同じ忍犬使いと言えど、一瞬にして豹変した姿の赤丸を目にし、眉を顰めていた。
キバも、先程赤丸に与えたものと同じものをパクりと口に運んだ。
「いくぜ赤丸!!」
そして体制を低く構え、印を固く結ぶ。
赤丸はキバの背に乗った。
「擬獣忍法!!獣人分身!!!」
背に乗ったはずの赤丸は、キバと全く見分けのつかない姿に成り代わり、また二人の顔つきは、凶暴な野生獣のようになった。
『でも兵糧丸って、忍者の携帯食なんじゃ…?』
さきは隣のカカシを見上げて質問した。
「あれはチャクラを一時的に倍増させる兵糧丸…ただ栄養補給する以外にも、例えば疲労回復に特化したものや、一族秘伝の兵糧丸なんてものもある」
『そうなんや…』
成程、それは知らなかった。
いわば即効性の高い便利なサプリメント、もしくは薬といったところか。
カカシの言葉通り、キバと赤丸の動きはチャクラが倍増したからか先程とはまるで動きが違っていた。
四脚の術を使ったキバは明らかにスピードが上がり、ナルトは逃げるので精一杯だ。
キバと赤丸二人のコンビネーションを活かした攻撃に、彼は隙を見せてしまい、それをキバは見逃さない。
「くらえ!!獣人体術奥義!!牙通牙!!!」
「ぐわあぁぁあ!!!」
牙通牙をまともに食らったナルトの体は高く舞上がり、地にドサっと投げ出された。
口からはたくさんの血が吐き出された。
『ナルトくん…!』