第68章 予選開幕-4-
「行くぜ赤丸!!」
「ワン!」
再びナルトへと迫るキバと赤丸。
地面に投げつけられた玉は、みるみると白い煙を放ち始め、あたりを真っ白にしていった。
どうやら煙玉を使い、自分たちの居場所を隠して戦う作戦のようだ。
鼻のよく効くキバは、ニオイでナルトの居場所を察知し、その煙に紛れつつ攻撃を続けた。
しかしこのままではまずい、と判断したナルトが袋叩きに合う前に煙幕から急いで飛び出した。
そこに待ち構えていた赤丸が襲い掛かる。
鋭い牙でガブリと思い切り腕に噛みつき、離さない。
煙の中にキバ、外に赤丸…二人の連携が見事な攻撃だ。
「うわぁ!」
ナルトは再び煙幕の中へと戻ってしまった。
会場のギャラリーからはその煙の中で何が行われていて、どういう状況にあるのかは全く確認できなかった。
そしてしばらくして…白の煙幕は徐々に消えていった。
そこには横たわるナルトくんの姿と、やってやったと言わんばかりに自慢げに座る赤丸がいた。
赤丸は、「いいぞ!」と褒める主人に向かって走り寄り…
―――――― ガブッ!!!
…そのままキバの腕に噛み付いた。
主従関係、いや、家族関係と言うべきか。
何にせよ犬塚家の犬と忍の絆は固く、強く、一心同体だ。
飼い主のキバに噛み付くなど犬塚一族を知る者は、誰も予想だにしなかった。
ザワザワと会場がどよめく中、ボン!と音を立て、そこにナルトくんが現れた。
彼は変化の術で赤丸に扮していたのだ。
『すごい…!考えたねナルトくん!!』
無鉄砲にただ突っ込んでいくだけのナルトは、もうここにはいなかった。
タイミングよく術を使い分け、相手の裏をかいた攻撃をしかけて捕らえる。
立派な作戦、身のこなしである。
「…この試験中にまた成長しやがったな…」
カカシも思わず心の声が口から溢れた。
誰もが認めざるを得ない一端の忍の姿を、ナルトはしかと見せつけたのだ。