第67章 予選開幕-3-
「忍法・心転身の術!!」
いのの声が響いた。
例えばカカシの雷切やさきの彩火の術のように、体から目に見える何かが発せられているわけでもない。
でもこの瞬間、いのの精神はいのの体を離れたのだろう。
その証拠に、彼女は首をガクッと項垂れ、膝から崩れ落ちるようにして座り込んだ。
会場の皆が術の成否を、固唾を呑んで見守っている。
立ち尽くしたサクラが、徐々に顔を上げはじめた。
そして―――
「フフ…残念だったわね いの」
サクラの意識は、サクラ自身にあった。
いのの心転身の術は失敗した。
「じゃあ、終わりね」
…誰もがそのように見えていた。
―――だが。
「ん?」
サクラは動けないままでいたいのに攻撃を仕掛けようと、その場から動こうとした。
―――しかし、サクラもまた、そこから一歩も足を踏み出すことが出来ないでいた。
「かかったわねサクラー」
心転身の術で意識を飛ばしているはずのいのの声がする。
サクラの足元を見ると、一見、先程いのが感情に任せて切り落とした髪が辺りに散乱しているだけのように見える。
しかし、それは彼女の策だった。
いのは自分の髪にチャクラを流し込み、サクラを捕える為の強力な縄にしていたのだ。
「なるほどね…」
カカシは感心して小さく何度も頷いた。
大切な髪を犠牲に…またそれを利用する、かなり捨て身な荒業ではあるけど、彼女以外にこんな作戦誰が思いつくだろうか。
そして―――