第66章 予選開幕-2-
場内には、次の試合の二名が既に戦いの準備を整え立っていた。
シノの相手のザクという子は、両腕を三角巾で首から吊っている。
おそらく第二の試験で骨でも折ったのだろう。
明らかに目に見える怪我を負った状態というのは、それだけで戦いに不利になることは明らかだ。
正しくザクの現状は、「腕が使えないので狙ってください」という情報を与えているようなものだ。
でも、それにしては挑発的な目つきをしている。
何か策があるのだろうか。
さきは何気なく、観覧席にいるザクの仲間の方を見た。
一人は長髪の女の子、もう一人は見える体の殆どを包帯でぐるぐる巻きにしている男の子。
そしてその隣に、髪を後ろで結い上げた男性が立っていた。
(あれがあの子たちの上忍師…か…)
そう思ってから間もなく、これから自分の引率する子の試合が始まろうというのに、彼は瞬身の術でどこかへ消えてしまった。
お手洗いかな?なんて一瞬考え、場内の二人に再度目を向ける。
しかし、すぐにまた、先ほどあの男性教師がいた場所へ目線を戻した。
(私の考えすぎ…?いや、でもなんか変じゃない?)
だって、仮にそうなのだとしても、わざわざ瞬身の術を使って移動するなんて、なんだか不格好でおかしな話だ。
試験中なのだから、急用が入るはずもない。
むしろ教え子の試合に集中するのが自然だろう。
それに先程見た表情は、何かおもしろいことでも企んでいるようなニンマリとした含み笑いだった。
大蛇丸の件があるからこそ、いつもなら気にしないようなほんの少し怪しいと思う行動にも過剰に敏感になってしまう。
(疑うのは良くないのかもしれないけど……何もなければすぐ戻ればいいもんね。)
根拠の無い不信感を拭えないさきは、自分が御手洗に行くついでに…と、先ほどの上忍を少し探してみることにした。
『ナルト君、サクラちゃん。ごめん…私ちょっと御手洗行ってくるね』
「はいはいーっ!オレたちはしっかり観戦してらァ!」
そして『すぐ戻るから!』と短く言い残し、小走りにその場から離れた。