第65章 予選開幕
あの不利な状況から試合を見事持ち直し、見事サスケが勝利した。
気が抜けたのか、もう力が残っていないからなのか、座ったままのサスケの体がグラリと後ろに傾く。
そこに、カカシがまるで風のように彼の背後に現れ、倒れそうになった体を支えてやった。
「ま!よくやったな」
その手にはイチャイチャシリーズ新作の「イチャイチャバイオレンス」がしっかりと広げられていたが、試合の内容をカカシは真剣に見ていた。
不器用なのか、癖なのか、そもそも本当に読んでいるのか。
なんでわざわざ本を広げちゃうのかな…とさきは思わず片眉を下げた。
「サスケー!!へへ……お前さ、お前さ!ダッセー勝ち方しやがって!ボロボロじゃねーかバーカ!!」
ナルトの大きな声に反応したサスケがこちら側を見上げた。
さきも左手でブイサインを作り、右手で小さく手を振る。
(ほんまに凄いよサスケくん。 お疲れ様…!)
隣にいるサクラは、倒れかけたサスケにも即座に気が付くほど、片時も目を離さずに彼を見守っていた。
とにかく安堵の表情で、サスケに特別声をかけるでもなく、ジッと彼を優しく見つめる横顔はただの13歳の少女ではなく、真剣に一人の人を思う女のそれがじんわりと滲み出たものだった。
『良かったねサクラちゃん。サスケくんのことほんまに心配してたもんね。』
「うん…サスケくん、良かった……」
あとはカカシが呪印を封印してくれる。
それでひとまずは安心だ。
『髪も可愛いやんか。ショートカット、好きやで私。頑張ったんやね』
さきがサクラの頭をよしよしと撫でると、いつもの彼女らしい可愛い笑顔に変わった。