第4章 Inviting Night
彼女がこの家に来てからというもの、夜に何かなかった試しがない。
今夜もその一例だ。
さきは特別美人でもなければ、特別可愛い顔でもないし、めちゃくちゃスタイルがいいかと言うとそうでもない。
……ま、胸はでかそうだけど。それは置いといて。
言うなら中の上、もしくは上の下あたり。
でも、そういうのはオレの嫌いなタイプじゃない。
だから、オレは、絶対に 絶対に…
……絶対に
手を出したりはしないが…
でもオトコの絶対なんて、絶対なハズがない。
オレ達はもうそんなことが分からないガキとは到底言えない年齢だ。
だからもしものことがあってはいけないと同じベッドに入ることを断り続けたが、結局折れたのはオレの方だった。
知らないよ と念を押してひとまずさきから離れ、クローゼットからもう1つ枕を取り出してベッドに置こうと振り返る。
すると、早とちりしたさきの、本当に出ていこうと玄関へ向かう、わかりやすく落ち込んだ小さな背中が見えた。
彼女に気づかれないよう近づき、頭の上に枕を落としてやると、彼女はまぁ酷い声を出して驚いて、枕ごと頭の上に手をやった。
思わず笑ってしまった。
彼女は出会った時から綺麗に着飾ってはいたが心はその時から全く飾っていなかった。
(なんなのその声。もっと女の子って可愛いもんでしょ、キャ~! とか。)
…あぁでも…オレはこんな気取らない素の反応の方が“可愛い”。
柄にもなくそんな風に思った。
ネイルアートとやらで薄ピンク色に美しく塗られた指は細く、長く。
その十数センチほど奥の締まった手首を捕まえ、おいで と手を引く。
さきはまた、嬉しそうに笑った。
『よかった。』なんてオレを見上げて、オレの隣に素直についてきたりして。
(……なんでそんな風に笑えるんだ?)
何度も何度も心を揺さぶるさきに、カカシは今度こそ、ハイハイと“適当に”答えておいた。