第4章 Inviting Night
『ここからこっちは私ね。』
見えない線を引き、カカシに背を向けてさきは横になった。
「ハイハイ、おやすみ」
と、言ってからもうどのくらい時間が経っただろう。
当然寝れるはずもなく、オレはひたすら狸寝入りを決め込んだ。
『…カカシ、寝た?』
突然のさきの声に え、起きてたの?さっきまでめっちゃ寝息たててたじゃない。 と、心の内で突っ込む。
カカシからの返事がないと分かったさきはムクリと起き上がり、自分に背を向けたカカシの上から、ぽつりぽつりと呟いた。
『ゴメンね……私のわがまま聞いてくれて。 カカシの身体が心配なんは、ほんまのことよ。 けど、こう3日もこの知らん世界で人の温かさに触れてると……なんか余計寂しくてさ。 夜は特に…情緒不安定で。 ここに来てからカカシを困らせてばかりやったよね。 …ゴメンね、まるでカカシを利用してるみたい。 …カカシも悪いよ。優しいから。』
『ありがと…カカシ』
オレの方に向き直ってそう呟き、再び寝転んださきの指は、オレの服を薄く掴んでいて、彼女はそのまま眠ってしまった。
今度こそ眠ったさきを起こさないよう、カカシもベッドの中心に向き直る。
そして服を掴んでいた名残の手を、そっとさきの方へ戻してやった。
…なんで、お前とオレはこんなに共通点が多いんだろうね。
唇を薄く開けて無防備に眠るさきをじっと見つめる。
「そんなこと分かってるよ…」
カカシは小さく呟いた。
お前は…オレに似て本当に“馬鹿”だね。
流石に一緒に寝たいというのは女にしては大胆だとは思うよ。
でも…
「オレも、お前と同じなんだよ…」
愛と孤独を拗らせた大人の空気を、今晩もまた風がさらっていった。
上手く甘えることが出来ない、不器用で同じ孤独を抱えた二人は、互いに触れることもなくそのまま眠った。