第64章 通過者と棄権者と
――――― ほんの数秒の沈黙がその場を包んだ。
『…出来るだけ…直ぐに封印して欲しい。
サスケくんが、大蛇丸のその力を求めないなんて言いきれんもん…体だって心配。試験は……様子を見ながら受けさせよう。』
カカシを見つめるさきの目は、今にも泣いてしまいそうなほど潤んでいた。
封印術など全くできないさきにとって、カカシは最後の頼みの綱同然だ。
「ああ…任せろ」
カカシは不安げなさきの頭をぽんとひと撫でした。
とは言っても、カカシが施してやれる例の呪印を抑える術となれば、サスケの意志を軸にした封邪法印くらいしかない。
決して弱い術だとは言わないが、さきの言う通り、サスケが力を求めればその術式は皆無となり、呪印は暴走を始めてしまう。
一番の課題はサスケの気持ちや考えを、強い力という誘惑から引き離してやれるかどうか…これだ。
(今のところ、イタチはともかく、ナルトに対しての敵対心も焦りも見えてきているアイツのことだ…アプローチを間違えると、一気に呪印に飲み込まれるだろうな…)
「はー…よりによってサスケか…こりゃ、俺の術だけじゃなくてお前の力も借りないとまずいね、どーも…」
カカシはさきの頭の上の手で、細い彼女の髪をワシワシと掻いた。
『私に出来ることなら何でもするっ』
拭いきれない不安を宿した瞳を揺らすさきの声色は先程よりも力強く、責任感に溢れていた。
(アイツの心のことばかりはさきに頼るしかなさそーね…オレじゃ多分、役不足だからな。)
『二人でなんとかしよ…!ね…カカシ!』
「ああ、そうだな」
オレの仲間を失うわけには、絶対いかないからね。