第63章 Shell
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夜の闇に包まれた、嫌になるほど視界の悪い死の森をまさに死ぬ気で駆け抜けること、数時間。
辿り着いた薄暗い牢の前では火影様が既に暗部と共にさきの到着を待っていた。
「早かったな」
息を整えながら駆け寄ってくるさきの姿が見えた三代目火影は、口元に薄ら笑みを浮かべて頷く。
『火影様!お待たせしましたっ…!』
「いや、こちらこそ突然呼び出してすまなかった」
その、”突然”呼び出された理由が良いものであればいいのだけれど。
というさきの期待を裏切るように、火影様は腕を組み、煙を含んだ息ではなく、深いため息を唸るように吐き出した。
「さき…これをどう見る?」
『え… 何がです?』
「実はの…日中にはここにいたはずの、お前が連れ帰った抜け忍が、忽然と姿を消したのじゃ」
『えぇっ?!』
さきは体裁など構う余裕もなく、思わず聞き返した。
『すみません、その……それって分身だったとか…そういうことでしょうか?』
この牢屋はチャクラを練ろうとすればチャクラを吸い取ってしまう特殊な素材で出来ている。
この中に入れば、チャクラを使用する忍術はいかなるものでも使用不可となるため、考えられるのは、元々分身だった…ということくらいなのだ。
「いや、実体に違いなかった。が、それが消えたのだ。
代わりに残っていたのがこの乾いたツルと葉…変わり身の類の、何かの術に思えるが…」
慎重に牢の中へ入り、足元に散らばる茶色いカサカサの物体を手にすると、それは植物のツルと、枯れた木の葉であることが分かった。
その近くには桃の種のような大きな種。
今、植物と関連することと言えば、さきの頭の中にはひとつしか結びつくものはなかった。