第63章 Shell
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時はあっという間に流れ、第二の試験開始から四日目の夜のこと。
さきは未だに体調の優れないアンコの為に替えのタオルを持って行こうと、棟内の廊下を静かに歩いていた。
その背後から、ドタバタと忍らしくない足音が廊下中を響かせてこちらに近づいてくる。
一体何事かとさきは顔だけを肩越しに後ろへ向けた。
「いた!さき様!」
『え……?様…?』
ほとんど面識のない中忍からいきなり”様”付けで呼ばれ面食らう。
「えっ…あ!アンコ様と親しい方なのでつい!
……いえ、そんなことより、早急に南の牢へ向かって下さい!先ほど火影様よりこちらまで伝令鳩が寄せられました!」
『牢?』
思い当たる節はひとつしかない。
あの雨隠れの里の抜け忍の件だ。
『ありがとうございます!すぐ行きます!アンコに伝えてください!…あっそれからコレついでに彼女のとこへ持って行って下さい!!』
さきは、手にしていた真新しい白いタオルをその忍に押し付け、返事も聞かずに近くの手頃な窓から飛び出し、森の中を走り抜けた。
試験のことで色々あったが、捕らえたあの忍のことは、ずっと頭の隅で気にはなっていたのだ。