第62章 異変 2
塔に到着した火影様は、話もそこそこに、まずはアンコの呪印を手早く見はじめた。
強い痛みを訴えていたアンコは、火影様の施しを受け、徐々にその表情に余裕すら垣間見えるほどに回復した。
自分たちではどうにもならないことでも、火影様の手にかかれば、大概のことは何とかなってしまう。
そしてそれは、このお方は五大国最強の忍なのだと痛感することになるのだ。
「さきよ」
『はい』
「.…お前は大蛇丸について、詳しいことは聞いてはないな?」
『はい…存じ上げません。…ビンゴブックに掲載の内容くらいでしたら把握してますが…』
さきが申し訳なさそうに言うと、火影様はアンコの呪印を捉えていたその瞳を「そうか」と、さきの方へと向けた。
そしてパイプをおもむろに取り出して火を灯し、最初の一口の紫煙を吐き出した後、ゆっくりと丁寧に話を始めた。
「大蛇丸は、かつてワシの部下じゃった…そして、アンコの上司でもあった。
木の葉の伝説の三忍という名を世に轟かせた忍の一人で、あやつは自分の意志と力を受け継いでくれる存在だと…そう思った時もあった。
強く才能に満ち溢れた天才…まさに数十年に1人の逸材じゃったからな。
だが、それは術者としてのこと。大蛇丸はいつしか、人外の思想を持つようになってしまった。
人体実験を繰り返し、禁忌術の開発を自ら構えたアジトで我々の目を掻い潜りながら、ずっと行っていたのじゃ…」
『禁忌術…?』
「そうじゃ。…奴の目的は、全忍術の習得。数千、数万…それ以上かもしれん全ての術とその真理を手に入れるために、あやつは不老不死の術を完成させようとしておった。
現在もそれは続いておるのやもしれん。
ワシは…そのアジトへ乗り込んだ時、かつての教え子を殺さねばならなんだ。
しかし、それは出来なかったのじゃ…。
…大蛇丸はこの里に恨みを持っている。
いつかはこの里へ戻ってくるのは明確じゃった。それがまさか、このタイミングになるとはのう…」