第62章 異変 2
「…なるほど…こりゃたまげたたまげた…」
そう言いながらあくまで冷静な態度を取る暗部も、この異常な状況に気が付いたようだ。
「傷一つない。それどころか、服にすら汚れ一つ見当たらない……」
怪我をしていないのは分からないでもない。
ただ、いくらなんでも僅かな汚れさえも付いていないのは、最新記録タイムうんぬんよりも驚くべき事だろう。
砂、埃、水をかぶったあと、汗のシミさえどこにもない。
『優秀……というより 有り得るんやね、こんなこと』
「いや、普通ならありえない…恐らくそいつの能力に関係があるんだろう……久々に頼もしい奴が出てきたな。嫌な目はしてるが…」
ここにいる誰もが彼に興味を示した。
「ふうん…やっぱり今回の試験はひと味違うみたいね…」
口角をクイッと上げて、然も楽しそうにするアンコ。
…だが、時折見せる歪んだ顔は、やはりとても辛そうに見えた。
『アンコ…そろそろ少し休もうよ。私お水でも持ってくるから。あとタオルも… ひとまずそこに座って、さっきの話の続きを聞かせてくれる?』
さきは先程までアンコが座っていたソファを指差し、アンコに座るよう促した。
「そうね…そうする。これから帰ってくる受験者は、アンタたちに任せるわ。悪いけど、頼んだわね。」
アンコはビデオを見せに来た中忍に簡単な指示を出し、倒れ込むようにしてソファへ身を預けた。
そして程なくして、先程森で別れた暗部と共に火影様が到着した。