第61章 異変
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さきは、暗部を二名を連れ、暗い死の森の中を走った。
既に他にも数名の暗部にもこの森の中に入ってもらっている。
アンコが死の森へ入ってはや数時間。
今は大切な中忍選抜試験中だ。
暗部の仕事も自ずと増えることから、なかなか人員が確保できず、ようやく立ち入った死の森は直径20キロもある大きな演習場のため、すっかり遅くなってしまった。
『あっ…いました!あそこです!』
さきがアンコを見つけた時、彼女は3頭の野生のトラに囲まれているところだった。
グルルルと喉をならしアンコを威嚇している。
ジリッと足元の砂が踏みしめられる音がした直後、トラが勢いよく、息を切らしたアンコに襲いかかった。
「『忍法 金縛りの術』」
さきと二人の暗部は、そのトラに金縛りの術を仕掛けた。
「ふーーー……」
彼女の目前で、虎はビタリと動きを止めた。
アンコは長く息を吐いた。
まさに文字通り間一髪、危ないところだった。
『ごめん、アンコ!遅くなった!』
「こんな所にいたか……アンコ」
さきたちは木の上から、アンコに声をかけた。
アンコは、かなり体力を消耗しているように見える。
「さき…来たのね…待ってた。暗部のくせに……来るのが遅いんですね」
「まぁ そう言うな」
さきは、見下ろしていた木の上から地面に降り立ち、アンコの元へ駆け寄った。
『探したよアンコ……何があったん?様子が少し変なんじゃ…』
と、そう彼女に話しかけた瞬間 ―――
「ぐっ…!!」
『?!大丈夫…!?』
突然苦しみ始めたアンコを見た暗部らも地面に降り立ち、彼女の様子を伺った。
アンコは左肩をギュッと強く押え、痛みに耐えていた。
(…肩…?肩が痛むの?)
アンコは一言も発することなく、ハァ、ハァと肩で荒い息をしている。
顔や胸元には、じっとりと汗が浮き出ており、光る玉となって流れていた。
「あの呪印が浮き上がって……まさかお前…!!」
焦った様子の暗部の一人に、アンコは静かに頷いた。
(…? 何? 呪印?)