第61章 異変
さきとアンコは直ぐに、現場に辿り着いた。
コテツがアンコに詳しい状況を説明する。
「持ち物や身分証からして……中忍選抜試験に登録されていた草隠れの忍なんですが…見ての通り……顔がないんです。
まるで溶かされたようにのっぺらぼうで…」
「…!」
説明を聞いたアンコの肩は震えていた。
まるで何かに怯えるような表情で、顔のない遺体を凝視する。
明らかにいつもの彼女とは様子が違っていた。
『アンコ…?』
「さき、この草隠れ三人の志願書を見せて!証明写真があったでしょ?!」
『あ、うん!』
まくしたてるような口調に少し困惑しながらも、手早く草隠れ三人の志願書を取り出してアンコに手渡した。
受け取った写真を見たアンコは、はぁっと息を吐き出し、何かに落胆した。
一体どうしたというのか。
普通ではないアンコの様子に疑問を抱いたさきは、その証明写真を横目でチラりと確認した。
(…あれ?この顔って……あの時の…!)
明らかに見覚えのある顔に、さきも思わず目を見開く。
試験直前に、アンコに下忍とは思えないほどの殺気を放ち、クナイを向けたあの人だ。
ゾクッと背中に悪寒が走った。