第60章 試験官のお仕事
この男は、前回の中忍試験の第三の試験の当日、トーナメントの発表があった後、直ぐに試合を棄権した。
何の手の内も見せることなく、あの爽やかすぎて逆に不自然さを感じるような笑顔を残して軽々しく去っていったのだ。
それがとても気味が悪かったのを覚えている。
『ま、とにかく…この試験は、前回一緒にクリアしたんやからさ、頑張って。ちゃんと突破してね?』
「どうでしょう。やれるだけやってみます」
さきはゲートに到着後、金網の扉を施錠する南京錠と鎖を鍵で解錠し、手元の時計を確認した。
秒針がカチカチと音を立てて進んでゆく。
5…4…3…2…1… カチッ。
時計の針が開始時刻を指した瞬間、アンコの声が響き渡った。
「これより中忍選抜第二の試験!開始!!」
その合図とともに、不気味な森への重い扉を目一杯開いた。
(ナルトくん、サスケくん、サクラちゃん…みんな、頑張って…!)
受験者たちは一斉に走り出してゲートを潜ってゆく。
それは、まるで真っ暗な死の森へ吸い込まれていくかのよう…。
―――――― 数秒と経たないうちに、受験者全員がその姿を闇の中へ消していった。