第60章 試験官のお仕事
『……さてと…』
さきは、完全にカブトたちの姿が見えなくなったところで、再び森のゲートを閉め、南京錠で鍵をかけた。
そしてアンコの元へ向かおうと、体の向きを変えた途端、森の中から大きな悲鳴が聞こえてきた。
『あー……やだやだ。 変な虫とか爬虫類とかめっちゃ居そうやもんな…』
あれは早速森の驚異にさらされた受験者の悲痛な叫びだ。
さきは修行や任務で野宿を経験したことは何度もあるし、其のお陰もあってある程度の昆虫などには体制がついてはいるのだが…この森の生物は話が別だ。
大きい・狂暴・キモイこの三拍子が揃っている。
そういうグロテスクな見た目や気持ち悪い生物は、マジな方で無理なのだ。
演習場の周りを三分の一ほど進んだだろうか。
ようやく、開始の合図をした後、森の外から様子を伺っているアンコの姿が見えてきた。
先ほど聞いたような受験者たちの絶叫がこちら方面でも響いている。
「ウッフフ 早速始まったか」
『…楽しそうやね、アンコ』
「まあねー…見物よね今回の受験者。楽しみだわ」
それが一体どんな意味を含んでいるのかは分からないが、恐らくアンコはこの森を知り尽くしているだろうし、“どれだけ落ちる人がいるのか楽しみ”という解釈をとっておそらく間違いないだろう。
程なくして続々と、スタートを担当していた中忍以上の忍がアンコの元へ続々と集まった。
ザっと面々を確認したアンコは、小さく右手を挙げた。
「じゃ、私はここで一服してから棟に向かうわね!持ち場の見回りは事前に指示した通り頼んだわよ。
何かあったら報告して…じゃ…散!」
アンコが手短に指揮を執る。
さきもそれに従い、持ち場へ着くためその場から離れた。